「検事失格」を読みました
久々の読書ネタです。
佐賀市農協不正融資事件という刑事事件があり,関係者3人が逮捕・起訴された中で2人が福岡高裁で無罪判決が出て確定したという事件があったのですが,そのとき主任検事となった人が書いた本です。
プロローグは,少し前にフロッピーディスク改ざんで有罪判決を受けた検事の話に始まり,司法試験合格後検事を志した理由や新任から佐賀地検に赴任するまでのエピソードが書かれた後,本題の佐賀市農協不正融資事件でなぜ無実の人が起訴されるような事件が起きたかについて,検察内部の事情が生々しく語られています。
事件の筋は当時の佐賀地検の次席検事が描き,途中で止めることができないままブレーキが壊れた車のように突っ走っていったこと,しかし,主任検事は自分であり,最終的には自分が全て責任を負うべきことが書かれていて,様々な「とりかえしのつかないこと」をしてしまったなかで,今は弁護士として,前向きに進んでいる著者。
佐賀市農協不正融資事件に関する部分や検察庁内部が抱える問題については,色々な評価があるので軽々しいコメントは避けたいと思います。
ただ,その検事が青雲の志をもって検事任官したことには,自分もそのような志をもって弁護士になったことを思い出させてもらうことができ,また,大きな過ちを犯しながらも今は刑事弁護士として人権擁護を全うしようとする姿勢には大変な感銘を受けました。
時々読み返したいと思う一冊でした。