吉岡さんの弁護士日記

なにわ総合法律事務所の弁護士 吉岡 康博がつづる弁護士日記

民泊禁止の管理規約改正はお急ぎ下さい

民泊新法(住宅宿泊事業法)がいよいよ今年(平成30年)の6月15日に施行されます。
これに先立ち,住宅宿泊事業を営もうとする者の届出の受付が3月15日から先行して開始されます。

民泊新法は,近年の外国人観光客増加等に対応して空き家等を活用するために,民泊を合法化するものですが,分譲マンション内での民泊は住民とのトラブルを招く恐れがあり,騒音,衛生,防犯上の問題点なども指摘されています。

分譲マンションを利用した民泊を経営したい場合は,住宅宿泊事業者の届出をすることになりますが,届出に際して管理規約の写しの提出が求められています。
民泊を管理規約で禁止しているマンションについては,届出が受理されない仕組みになっています。

これを逆から見ると,一旦住宅宿泊事業者の届出をした後に管理規約が改正されて民泊が禁止となっても,当然に届出が無効になるわけではありません。

したがって,分譲マンションにおいて民泊を禁止すべきという意見が多い場合は,3月14日までに管理規約の改正手続を行い,民泊を禁止しておく必要があります。
あと1か月程度しかありませんので,まだ対策されていない管理組合はお急ぎ下さい。

分譲マンションの水道料の一括検針

マンション管理新聞の最新号に,分譲マンションの水道料の一括検針に関する興味深い裁判例が載っていましたので,ご紹介します。

名古屋高裁で平成25年2月22日に言渡された判決です。原告はマンションの区分所有者(住戸を競落した不動産業者),被告が管理組合で,第一審が簡裁であったため,これが上告審です。

このマンションは,水道料金を管理組合が水道局に一括支払いし,検針に基づき各区分所有者に請求するという「一括検針・徴収制度」を採用していました。大きな争点は2つあるのですが,1つめは,前主が滞納した水道料について承継人にも支払義務があるのか,という点です。

この点については,たとえ管理規約に「承継人にも支払義務がある。」と規定されていても,特段の事情がない限り承継人に支払義務はないと判断されました。
従前から私がセミナーなどでお話ししているとおり,管理規約は,「建物・敷地・附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項」に関して定められるべきであって,専有部分で使用される水道料について管理規約で規定しても,それは無効と解されるからです。

それよりもこの判決が興味深いことは,一括検針・徴収制度について,区分所有者と管理組合の法律関係のいかんによっては,請求できる水道料が限定させる余地があると述べている点です。
通常,一括検針・徴収制度の下では,水道をあまり使用していなくても,基本料金を管理組合から請求されます。管理組合はマンション全体で実際に使用した分を水道局に支払っているので,当然,基本料金との間に差額が生じ,通常これは修繕積立金などに充てられています。
名古屋高裁の判決は,この余剰金が発生する仕組みについて問題を呈した形になっています。

現在,この訴訟は地裁に差し戻されていますので,その判断が待たれるところですが,その結果によっては,管理組合の運営にも少なからず影響があるのではないかと思います。

プロフィール

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吉岡 康博(よしおか やすひろ)
大阪弁護士会所属

なにわ総合法律事務所
〒541-0053
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TEL:06-4705-0325
FAX:06-4705-0328

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