吉岡さんの弁護士日記

なにわ総合法律事務所の弁護士 吉岡 康博がつづる弁護士日記

日本郵政がNHKに圧力

令和元年9月26日付毎日新聞で,かんぽ不正販売問題に関して日本郵政がNHKに圧力をかけていたことが報道されました。

ことの始まりはNHKが平成30年4月にクローズアップ現代でかんぽ不正販売問題を取り上げ,続編を放送するためにNHK製作現場がツイッターで情報提供の動画を投稿したというもので,日本郵政は「犯罪的営業を組織ぐるみでやっている印象を与える」などと言ってNHK側に動画の削除を求めたという事件です。

問題なのは,クローズアップ現代放送後の平成30年6月にかんぽ生命が部長級幹部による社内会議を開き,かんぽ生命の契約について多数の苦情があったことが判明しているのに,日本郵政の経営陣は「現場の一部社員の暴走」と捉えて重要視しないまま,NHKに圧力をかけたものです。

通常,クローズアップ現代で不正販売が取り上げられたら,日本郵政の経営陣としては社内調査を徹底的に行うべきですが,同経営陣にそのような発想はなかったようです。

NHK側に圧力をかけた経営陣が今も日本郵政側に残っています。
金融庁と総務省はかんぽに対して報告命令発出や立入り検査を行っていますが,消費者目線での改革はほど遠いのではないかと思っています。

以下,報道記事に基づいてこの件に関する時系列をまとめてみました。
遅くとも日本郵政の経営陣は6月中に調査をして早急に謝罪すべきたったことは明らかで,経営陣も含めた会社ぐるみだったと言われても仕方がない流れになっています。

H30.4.24 NHKクロ現がかんぽ不正販売問題を取り上げる。

H30.6   かんぽ生命幹部による社内会議で多数の苦情があったことが判明。

H30.7.7  NHK製作現場がツイッターに情報提供を呼びかける動画を投稿。
H30.7.10 NHK製作現場が再度動画投稿。
H30.7.11 日本郵政がNHK上田会長宛に動画の削除を申し入れ。「犯罪的営業を組織ぐるみでやっている印象を与える」とのこと。
このころ NHK番組幹部が郵政に出向き「番組制作と経営は分離し、会長は番組制作に関与しない」と説明。
H30.8.2  日本郵政が「最終責任者が会長であることは明らか。NHKでガバナンスが全く利いていないことの表れ」と主張し、説明を求める文書を上田会長に送付。
このころ 郵政が続編の取材を断る。
 NHKが8月上旬に続編延期を決め,動画2本を削除。

H30.10.5 郵政がNHK経営委に「ガバナンス体制の検証」などを求める文書を送付。
H30.10.23 NHK経営委が上田会長を厳重注意。郵政側に「会長に厳しく伝え、注意した」とする文書を送付。
H30.11.6 上田会長が郵政に事実上謝罪する文書を届けさせる。内容はH30.7の番組幹部の発言について「明らかに説明が不十分。誠に遺憾」というもの。

R1.6.ころ かんぽの不正販売に関する報道が相次ぐ。

R1.7.31  郵政グループ三社の社長が記者会見で不正販売を謝罪。ただし「経営陣はR1.6ころまで重大な問題と意識していなかった」とのこと。
R1.7.31 NHKがクロ現で続編を放送。

投稿者 吉岡 康博 | 2019年9月27日 22:23

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吉岡 康博(よしおか やすひろ)
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