吉岡さんの弁護士日記

なにわ総合法律事務所の弁護士 吉岡 康博がつづる弁護士日記

大和都市管財事件,国が控訴断念

本日,金融担当大臣から「大和都市管財国賠訴訟事件の控訴審判決について,上告を断念する。」という発表がありました。

 

「大和都市管財被害者弁護団」は,私が入っている弁護団の1つで,私が弁護士になって初めて起こった大規模消費者被害事件でした。

 

事件が起きたのは,平成13年4月です。

大和都市管財という抵当証券販売業者が破綻し,被害者約1万7000人,被害額約1100億円という被害が顕在化した事件です。

 

大和都市管財は,早い時期から自転車操業の状態にあり,監督官庁であった近畿財務局も問題視していましたが,にもかかわらず平成9年12月に漫然と大和都市管財の登録を更新してしまったため(大和都市管財のような抵当証券業者は,3年ごとに更新登録を受けなければなりませんでした。),翌年以降に新たに抵当証券を買った方々を原告として,平成9年12月に近畿財務局が大和都市管財の更新登録をしなければ,被害は拡大することがなかったとして,国を相手に損害賠償請求をしたという事件です。

 

訴訟は,平成15年に提訴され,平成19年5月に大阪地裁で国の違法性を認める判決が出ました。その後,国,被害者の双方が控訴する形で舞台は大阪高裁に移されました。

 

その判決が出たのが平成20年9月26日です。

結果は,被害者側のほぼ全面勝訴でした。

大阪高裁は,近畿財務局が「恣意的権限不行使(誤解を恐れずに言えば「わざと権限を行使しなかった」ということ。)」ことによって,大和都市管財の登録を更新し,生き延びさせてしまったことが違法であると断罪しました。

 

被害発生からずっと被害者の方々とともに戦い続けましたが,本当に心に残る判決でした。

 

国が上告を断念したことで,10月10日には判決が確定する予定です。

判決は,15億円を超える支払義務を国に認めるものとはいえ,弁護団に依頼された方々の被害額に比例して配当すると決して大きな金額にはならないかも知れません。

それでも,判決当日に裁判所に傍聴に来られた被害者の方々と喜びを分かち合えたことはとても大きかったと思います。

 

これから,大和都市管財国賠訴訟事件のことについても,少しずつ振り返りながら書き込みをしたいと思います。

投稿者 吉岡 康博 | 2008年10月 6日 22:07

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吉岡 康博(よしおか やすひろ)
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