国内先物取引
先物取引とは、大豆、ゴム、ガソリン等の商品について、将来の決まった時期に現物を渡すことを約束した上で、その価格を現時点で決めて行う取引です。ただし、実際に期日に現物を受け渡しすることはほとんどなく、期日までに差金決済をします。 先物取引は、商社や原材料の仕入れ業者などが購入価格を安定させることを目的として行われますが、その値動きを利用して投資家が投資目的で行うこともあります。
もっとも、商品先物取引の相場は、商品の需給動向のみならず国際的な政治・経済・軍事情勢、天候や天変地異等の自然現象、世界各国における市場の状況、投機家の思惑など多様な要素が複雑に絡み合って形成されるもので、一般人にとって相場を判断することが難しい取引である上、実際には、委託証拠金として業者に預けたお金の何倍もの取引を行っているため、相場が少し動いただけで多額の損失が発生することもあるハイリスクな取引です。
その上、商品先物取引の業者は、無差別電話勧誘や訪問勧誘により執拗に取引を勧誘して、先物取引の仕組みや具体的な危険性を説明しないまま取引を受託したり、高齢者、投資経験のない者やハイリスクに耐えられるだけの資産を有していない者を勧誘したりするなど、問題のある取引を行うことがあります。
なお,国内の商品取引所における取引を国内商品先物,ニューヨークやシカゴといった海外の商品取引所における取引を海外商品先物と区別し,従来は,両者を別の法律で規制していましたが,平成23年1月以降,すべて商品先物取引法により規制されることとなりました。
こんな点が違法行為!
- ■不適格者に対する勧誘・受託
- 高齢者、投資経験のない者、十分な資産を有しない者に対する勧誘など、先物取引に適合しない人に対して勧誘し、取引を開始させること。
- ■説明義務違反
- 投資経験が不十分な者に対して、先物取引の仕組みやリスクについて十分な説明を行わないまま、取引を行うこと。
- ■断定的判断の提供
- 営業マンが「イラクの情勢がまた不安定になっている。原油の価格はこれからも必ず上がる。」「今年はエルニーニョ現象により作物が不作になるので、大豆やとうもろこしの価格が高騰する。」などと述べて契約をさせたり、取引を拡大させたりすること。
- ■新規委託者保護義務違反
- 仮に先物取引の仕組み等について十分な説明を受けたとしても、初心者が具体的な取引において適切な対応をすることは極めて困難なので、一定の習熟期間を設けてその期間内は少ない(試験的な)枚数しか売買できないようにすべきなのに、当初から大量の取引を行うこと。
- ■過当取引
- 取引経験や資産に比べて過大な売買を行うこと。
- ■無意味な反復売買
- 両建(りょうだて)、日計(ひばかり)、直し(なおし)など、特別な理由もないのに意味のない売買が多数行われること。
- ■仕切拒否
- 取引を終了して欲しいと業者に申し出ているのに、業者側で色々な理由を述べて取引の終了を拒否し、さらに取引を継続させること。
- ■利乗せ満玉
- 計算上利益が出ても手仕舞いをして取引を終了させる指示に応じず、益金を証拠金に振り替えて建玉すること。
ほとんど全ての事例で、上記複数の違法行為 が競合してなされている。
解決法
商品先物の場合、示談によって回復できる金額は、一般的に言ってそれほど大きいものではありません。
裁判まではしたくないと思われる方や、長期化するのは避けたいと思われる方の場合、示談で短期解決することも1つの選択肢です。一方、業者の提示金額に納得がいかない場合は、民事訴訟を提起することになります。裁判では、残念ながら被害者側の過失を指摘して何割かが過失相殺されることがあります。どれくらいの割合を過失相殺されるかは、被害者の方の投資経験や資産状況によって決まりますが、裁判官によってまちまちであるのも現実です。
できるだけ高額の損害賠償を勝ち取るためにも、投資被害に関する経験のある弁護士に依頼することが重要です。